本物の人間関係

友人の紹介である人物と会った。その人は数十年前に投資ファンドで7百億円を運用して破綻させた事により、詐欺で刑務所に10年服役していた男であった。
当時はベンチャー企業と呼ばれ始めたころで、ソフトバンクやパソナといった若手経営者が世に名前を売り出していた時代であった。彼もその中の一人で飛ぶ鳥を落とす勢いでビジネスを楽しんでいた。
天ぷら屋のカウンターで友人を交えて食事をしながら昔話を聞いていた。
今は名前が汚れてしまい、何をやるにも気力が湧いてこなかったという。
最近になって友人の励ましや生き方に感化され徐々にやる気になってきたという。
彼曰く、いい時には人はどんどん集まってくるが、悪くなった途端に潮が引くように去っていく。それが心を深く傷つけ自ら当時の友人に連絡するのに躊躇があるのだ。
そんな中でも私の友人は彼の力になるべく、身の回りの世話から精神的なサポートまでやっているのだ。また、超有名な一部上場会社の社長も彼と昼食をしながら力づけしているという。それを聞いたとき一人の人間として付き合う姿勢と、自分の利に適う相手として付き合う場合と見たときに断然、後者の方が多いのだろうと思う。
ビジネスを通して友人になった場合でも、どん底にいる相手にいいときのように一貫した姿勢で付き合える人間はそうはいないだろう。私の友人や超有名な社長も当時から一人の人間性に魅力を感じて付き合っていたのだろう。たまたま、ビジネスで失敗して社会的責任を負ったとしても、彼の人間としての在り方は変わらないのだ。何かそんな人間関係が作れたら素晴らしいと思った。

忘年会

個人的な忘年会を初めて主催させてもらった。
目的は私の友人同士で縁が深まりビジネスに発展するも良し、友人として縁が出来るきっかけになっても良いし、ヨコの繋がりが実現できれば幸いと思ってやってみた。
今までは自分が主体となって何かのイベントをやるとかは全く無かったが、友人からのアドバイスで私が声がけしたら、喜ぶ人がたくさんいると思うと言われたのがきっかけであった。年末の忙しい時期にもかかわらず30名近い友人が集まり大いに盛り上がった。
小学校1年生のクラスメートから、高校時代の野球部の仲間、社会人に入ってからの先輩、現在親しくしている友人たちが一堂に会した。
宴の席にも関わらず、自己紹介の時間になると、みんなグラスを置いて真剣に耳を傾けている姿が印象的だった。仕事がらみの忘年会とは全く違った雰囲気の中で、それぞれが交わり私を下げたり上げたりしている話があちこちから聞こえてくる。主役を演じて見て、みんなから話題の中心になっている居心地がとてもよかった。本当にありがたく感じた瞬間だった。また、今日初めて会った友人同士が仲良く会話をしている姿を見てとても嬉しく思った。利害関係がないので互いに警戒心もなく打ち解けるのも早かった。司会をやって盛り上げてくれた友人、裏方を演じてくれた友人に大感謝である。
約2時間という短い時間ではあったが目的に合った忘年会が出来た事がとても嬉しかった。
また、このような友人達がいること誇りを持ちたい。

わらじカツ丼

秩父に美味いカツ丼があるというので行ってみた。
裏路地に入った場所でようやく看板で解るといった感じの古い木造の店だった。
日曜日なので混雑を避けるため早めに到着した。
お昼は11時開店で13時には終わり、夜は17時から18時30までという営業時間の短さなので、せっかく来たのに食いっぱぐれる恐れがあるのだ。
店内に入るとメニューはカツ丼しかない。「わらじカツ丼」と呼ばれるものでカツがわらじのような形をしていて通常は2枚のっている。女性のために1枚も用意があるが、800円と700円本当にこれしかないので驚いてしまった。注文したらいいのか迷っていたら主の奥さんらしき方が水を持ってきてくれた際に、2枚か1枚の確認だけして前金でお願いしますとのこと。どことなく強気の態度に自信が伺える。
店内は20名位入れるが満席で外に順番待ちしている方が数名いた。
私は店に入ると売り上げを予想するのが癖で心の中で計算していた。夫婦2人だと収入がこれくらいだなと一人で納得していた。
先に注文をした人のカツ丼が来たので見てみると、確かにわらじの形をした大きなカツが2枚どんぶりにのっている。しかし通常のカツ丼と違い玉子は一切使わずに揚げたカツをそのままご飯にのっているだけであった。みんな黙々と食べているだけで何の感想も聞こえてこないので不安になっていると注文の品がきた。
ほんの気持ち程度のお新香が付いてきたが汁物はなかった。食べて感じたが、たれが美味かった。絶妙な甘みが揚げたてのカツを引き立てる。しかし完食した時にはしつこさが口に残りしばらくは食べたい気持ちにならなかった。秘伝のタレがお客さんを引き付けて離さないのだろう。

不思議な店

ふらっと入った屋台風の居酒屋での出来事だった。
客席は賑わっていたのでそこそこいける感じがした。自慢の料理を聞き注文してしばらくすると、店員がざるを持ってきてテーブルの上に置いていった。何となく気になっていたが特に聞きもせずに料理が揃って飲み始めた時だった。
日焼けをした店主らしき人物が言った。「注文するたびに会計を済ませるので多めにお金をざるの中に入れておいて下さい」私はいくらか検討がつかなかったので聞いてみると、とりあえず4000円位というので財布から1000円札4枚取り出してざるに入れた。
何だかテーブルにお金が入っているざるがあると妙な違和感がある。おまけに注文するごとにざるからお金を取っていくのだ。何でそんな面倒な事をするのだろうと考えていた。そうこうしている間に、ざるの中のお金がなくなったので今度は1万円札を入れた。
ご丁寧に注文した後におつりをざるの中に入れて、次の注文をすると、またその中から代金を徴収するのである。
その繰り返しをしている間にあることに気がついた。食べたり飲んだりしている間に嫌でもざるの中のお金が目に留まるので、今いくら使っているのか解るのだ。また、注文する度にざるの中のお金が減っていくので少し注文を控えたくなる気分になった。
店からすると間違いなく代金を回収できるわけだが、マイナス要素の方が多いと思うのは私だけなのか?客は賑わっているが味はそれほどでもない。まさかこの代金回収システムに人気が集まっているのか?不思議でたまらないまま、お会計を済まさずに帰った。