クレーム

私はカレーが大好物だが、次に好きなのが「そば」である。
赤坂の砂場、六本木のHONMURA AN、西麻布の千利庵、この三つがお気に入りの店だ。
肴も種類が豊富で〆のそばは何れも一級品なのだ。
先日、そばが食べたくなったので、三つのどこかに行こうかと思っていたら、急に雨がふって来たので、自宅からすぐの蕎麦屋に行った。

ここは、そこそこの店なのだが店長の態度が横柄なので足が遠のいていた。
店に入ると案の定、店長がいて注文を取りに来た。
私が焼酎と梅干を頼んだら梅干はないと言う。
ふーんと思い仕方がないと諦めたその時、店長が厨房に向かって梅干しあるか! と叫んだ。
そしてあるならあの席に持って行けと、ホールスタッフに命じた。
その瞬間、私はお膳をひっくり返した。
その不愉快極まりない態度に電光石火の如く、店長を席まで呼びつけ唸り飛ばしてやった。
今までの怒りが蓄積していたのもあり鬼軍曹の形相で大叱責したのだ。
我を忘れて怒鳴った。
滅多に怒りを露わにしない私だが、今回は久しぶりに表面化した。
冷静になると大人気ないと思うのだが、自動的な感情をコントロール出来る訳でもなく、しかし、怒りを出し切ると冷静に彼と向き合い質問した。
私は彼から正式な会社名と連絡先を聞いた。
調べてみると、蕎麦屋の他にイタリアン等の飲食店を展開している会社だった。

翌日に会社のWEBへメールでクレームを投稿した。
内容はシンプルで店長の横柄な態度に不愉快な思いをした事を書いた。
すると、2日後に蕎麦事業部の責任者から丁重なメールを頂いた。
凄く真摯に対応しているのが伝わって、かえってこの会社の評価が上がったのだ。
こんなに丁寧な文章で、私が投稿したお礼まで書いて下さった。
素晴らしい会社だと思った。
果たしてクレームがもしWEBから来たら、当社でもこのような対応が出来るのかと思った。
企業から見たら、本当にクレームを言って下さるお客様には感謝すべきで、これをきっかけに信頼関係を築いてその会社のファンになる可能性が見出せるのだ。
それを今回の件で私自身が感じたのだ。
クレームとは改善すべきチャンスであり、見逃せばそれが積もって小事故に、更に対処しないで先送りすれば大事故に繋がるという、1:29:300の法則の如く、活かすも殺すも企業次第という事だろう。
東電がその最たるものだろう。

やっぱり京都は凄かった

友人から聞いて一度行って見たかった場所がある。
友人が京都に仕事で訪れた際、地元の仲間に連れられ昼食に来た時に感銘を受けたと話してくれた。京都で食事と言えば、京懐石が有名で街中にたくさん店がある。
有名店から裏路地に入った馴染み御用達の店まで本当にたくさんの料理屋がある。
そんな中で地元の仲間が是非にと街中から車で延々と離れた山奥まで昼飯を誘う。
友人は道中、余りにも山奥に入り時間が過ぎて行くので何度も不安になったと言う。

私は友人からそんな話を聞いていたので心構えがあり、京都駅からタクシーで現地に向かった。
確かに遠かった。1時間少しで9000円だったが道中タクシーの運転手さんと色々話をした。
その方はご年配のベテランドライバーで尺八を得意技としている珍しい方だった。
赤信号の時に吹いて貰ったが、素人の私でさえその凄みある音色に圧倒される位だった。
そんな彼が昔これから向かう場所に行った事があるという。
宴席があるので、運転とは別に尺八で御客をもてなすよう会社からの司令があったそうだ。
そこは昔から京都の旦那衆や大坂市場の元締めが芸妓さんを連れてやって来るという、知る人ぞ知る場所だという。

ようやく現地について周りを見渡すと道が行き止まりになっていて、秘境の中にぽつんとあったのだ。
「美山荘」四代目のご主人が受け継ぐ伝統ある看板が目に止まった。
4組しか宿泊出来ない一部屋に通された。
昔は宿坊だったそうで隣に神社がある。
何もない心地良さを感じた。
お世辞にも綺麗な部屋とは言えないが、すだれや掛け軸は品格を感じて何もない部屋での意義深さがあった。
昔はこんな風だったのかも知れない。
テレビも無く、机も椅子もない畳の中に座卓があるだけ。
子供が来たらさぞかし退屈するような空間である。

別棟に移り食事の時間がきた。
摘み草料理と聞くがどんなものが出てくるのか楽しみだった。
カウンターだけの部屋で料理人と向き合って食べる。コの字型で3組6名で満席になる。
この日は私と妻、50後半位の友人同士の女性2名、30前半位の男性1名の組み合わせだった。
炭火を鉢に移して料理の準備を整える。約2時間を要する食事は格別だった。
京都の料理が凝縮されていて、洗練された食材の組み合わせが絶妙の隠し味と共に口の中で充満する。
庭先で取れる野草類、オーガニックな野菜、すぐ脇の川で取れる鮎、鯉の洗い、豆腐、
行って食べないと表現出来ないこの京懐石。
カナダからヘリコプターで訪れたり香港やシンガポールからこの秘境まで来る訳がうなずける。
格が違うのである。
料理の格が違い過ぎて突き抜けている。
肉や刺身の類いは一切出なかった。摘み草料理でそれらを遠く凌ぐこの感動は何か。

答えは京都だと思った。
世界のトップクラスに位置する伝統文化。
やはり京都は凄かった。
少し行けば福井県、京都の外れに位置するこの美山町の秘境の中で京都が味わえる凄さ。
わざわざ街中から昼飯を食いにくる理由が解る食の芸術品。
「美山荘」確実に私の人生で最高に突き抜けた食事をいただけた。

秋に再び行こうと思う。

債権債務の相殺

債権債務の相殺という言葉を最近よく聞くようになった。
要するに、貸し借りなしの「ちゃら」にするという事である。
大きく見ればヨーロッパの問題がそれで、特にギリシャは債権債務の相殺が困難で
債務が大き過ぎてちゃらに出来ない、おまけに返済する気もさらさらないので、
貸し手側も色んなしがらみの中で右往左往している。

小さな問題で見ると、金の貸し借りがある。
貸し手側が借り手側に取り立てる場合、期限が過ぎても返せなかったり、返す
見込みが無ければ貸し手側は別な方法で対処する。
それは様々あると思うが、結局のところ金が返ってこない場合はお手上げになる。
ギリシャの例がそれで全く返す気がないのだから、事実上、貸し手側は金が
返らない事を自分に言い聞かせて諦めるしかない。
貸した側の責任もあるわけで、今後二度と同じような相手に貸さなければいい。

私の友人で例えると、金を集めて投資をするファンドを立ち上げするも2年もたないで破綻した。
投資をした連中は目を真っ赤にして返せ、返せと急き立てたり、苦しいから返せと
連日のように連絡して来たり、中には極道を差し向けてくる大ばか者もいたりする。
友人はギリシャのように開き直った対応は全くしていないが、私から見れば債権債務の
相殺で店仕舞いしたのである。
投資した連中の責任もあるのだから、今後二度とファンドのような博打をやらなければ良いし、
そんな暇があったらせっせと本業を伸ばせばいい。
債権債務の相殺は双方の同意が無くとも成り立ってしまうようだ。

視察での学び

アパレル企業の経営者S氏から話があり、現地視察の段取りがついたので松山で落ち合った。
S氏は広島での仕事を終えてフェリーで松山入り、私と不動産業者である友人H氏は羽田から松山空港に到着した。

私は10年程前に仕事で一度松山を訪れたことがある。
今回はそれ以来で、松山市街から車で15分程に位置するホテルと果樹園がついた6000坪の土地売買の目的で訪れた。
企画は視察前にH氏と幾つかシュミレーションしていたが、やはり現地を確認すると大分違ってくる。
3代目のホテル経営者と面会し、ある程度実情を把握したのでS氏を交え食事をしながらブレストした。
S氏は大局観あるイメージで話をされ、ビジネスセンスを感じた。
S氏とは一度面識があるので今回で二度目になるが、非常に紳士的な振る舞いが印象的で、瞳の奥から力強いエネルギーを放つ人で63歳になる。
パリやニューヨーク、日本全国を飛び回っている元気なおっちゃんだ。
どこかの俳優に似たイケメンでもある。
酒を汲み交し本音トーク炸裂の中で、真面目に感じた事があった。
非常に相手の事を考えていて、気を配った対応を随所に見せるのだ。
それが自然な振る舞いで、およそ人に気を使っている様な印象を与えずにサラッとやってのけるのだ。
人間力があるというか、人格が高い。
私もこのように振る舞いたいものだ。
しかし、私が気を使うと何か動作がぎこちなく裏目に出たり、逆に印象を悪くしたりするようで、何とかサラッとやってみたいものだ。
人格を高める為の一つとして、相手の事を考えた行動や言動を自然な形で表現する。
S氏と松山で出会った貴重な学びであった。
紹介者の友人H氏にも感謝だ。
ありがとう。