やっぱり京都は凄かった

友人から聞いて一度行って見たかった場所がある。
友人が京都に仕事で訪れた際、地元の仲間に連れられ昼食に来た時に感銘を受けたと話してくれた。京都で食事と言えば、京懐石が有名で街中にたくさん店がある。
有名店から裏路地に入った馴染み御用達の店まで本当にたくさんの料理屋がある。
そんな中で地元の仲間が是非にと街中から車で延々と離れた山奥まで昼飯を誘う。
友人は道中、余りにも山奥に入り時間が過ぎて行くので何度も不安になったと言う。

私は友人からそんな話を聞いていたので心構えがあり、京都駅からタクシーで現地に向かった。
確かに遠かった。1時間少しで9000円だったが道中タクシーの運転手さんと色々話をした。
その方はご年配のベテランドライバーで尺八を得意技としている珍しい方だった。
赤信号の時に吹いて貰ったが、素人の私でさえその凄みある音色に圧倒される位だった。
そんな彼が昔これから向かう場所に行った事があるという。
宴席があるので、運転とは別に尺八で御客をもてなすよう会社からの司令があったそうだ。
そこは昔から京都の旦那衆や大坂市場の元締めが芸妓さんを連れてやって来るという、知る人ぞ知る場所だという。

ようやく現地について周りを見渡すと道が行き止まりになっていて、秘境の中にぽつんとあったのだ。
「美山荘」四代目のご主人が受け継ぐ伝統ある看板が目に止まった。
4組しか宿泊出来ない一部屋に通された。
昔は宿坊だったそうで隣に神社がある。
何もない心地良さを感じた。
お世辞にも綺麗な部屋とは言えないが、すだれや掛け軸は品格を感じて何もない部屋での意義深さがあった。
昔はこんな風だったのかも知れない。
テレビも無く、机も椅子もない畳の中に座卓があるだけ。
子供が来たらさぞかし退屈するような空間である。

別棟に移り食事の時間がきた。
摘み草料理と聞くがどんなものが出てくるのか楽しみだった。
カウンターだけの部屋で料理人と向き合って食べる。コの字型で3組6名で満席になる。
この日は私と妻、50後半位の友人同士の女性2名、30前半位の男性1名の組み合わせだった。
炭火を鉢に移して料理の準備を整える。約2時間を要する食事は格別だった。
京都の料理が凝縮されていて、洗練された食材の組み合わせが絶妙の隠し味と共に口の中で充満する。
庭先で取れる野草類、オーガニックな野菜、すぐ脇の川で取れる鮎、鯉の洗い、豆腐、
行って食べないと表現出来ないこの京懐石。
カナダからヘリコプターで訪れたり香港やシンガポールからこの秘境まで来る訳がうなずける。
格が違うのである。
料理の格が違い過ぎて突き抜けている。
肉や刺身の類いは一切出なかった。摘み草料理でそれらを遠く凌ぐこの感動は何か。

答えは京都だと思った。
世界のトップクラスに位置する伝統文化。
やはり京都は凄かった。
少し行けば福井県、京都の外れに位置するこの美山町の秘境の中で京都が味わえる凄さ。
わざわざ街中から昼飯を食いにくる理由が解る食の芸術品。
「美山荘」確実に私の人生で最高に突き抜けた食事をいただけた。

秋に再び行こうと思う。