口説く

何を避けていたのか、最近友人の助言でその正体が明らかになった。

前々から言われていたような気がしたが、まったく耳に入ってこなかったようである。

2016年度の新卒者採用で、Y君が最有力候補として採用チームが選考してきた。
しかし、大企業を含めて内定を6社からもらっているY君をこちらに振り向けるのが採用チームの最大の焦点だった。

そこで、採用チームのリーダーと私とY君の3人で会食をする事になった。
この時点では残念ながら私は気づいていなかった。

会食では、会社のヴィジョンや価値観を深掘りして話し、現場の実話をリーダーが話したり、プライベートのことやらお互いの趣味の話で和やかな時間を過ごした。

私としては決めてがない感触があり、正直このままの状況で内定を出したとしても、彼が来てくれる可能性は低いと感じていた。
しかし、こちらから主体的に効果的な動きをする事は見出せないでいた。

その後、友人とその話をする機会があり、彼は私を弱気相場と称した。
いわゆる、株式市場で例えると買いより売りが多く、売りが売りを呼んで買い手が不在のような状況を指す。 売らないとどこまで下がるかわからなくなっている状態である。
彼独特な言い回しなのだ。

しかし、その時点でも私は聞こえなかった。

ある日、採用チームでの会議のあと役員と話し合いが行われた。
役員はこの際なんの考慮も捨て誠意をもって口説きましょうと言った。

最終的には私がY君を口説くのがベストとなった。

実は口説くのが大の苦手であった。
いや、苦手と言うよりもチャレンジしていなかったと言った方が正しいだろう。

そのチャレンジを阻んでいたのが友人の指摘した弱気相場である。

恐れ、傷つきたくない、これらが正体なのだ。

ある領域に踏み込むのに恐れがあるようだ。

それらを感じないために無意識に感情を避けている。

例えば、女性に対しても自分から本気で口説いた経験はない。

軽いノリで一緒に遊んで付き合いに発展したり、向こうから興味を持ってもらったと感じた時に付き合うようなスタンスで、私に対して嫌いの対象にないところからの相手を口説き落とすことなどは、断られたら傷つくのが恐いので無意識に避けていた。

要するにガラスのハートなのだ。

しかし、仕事でしかも最有力候補を何とか我が社に採用したいとなると、そんな子供染みたことを言い訳にしてチャレンジしない自分でいるわけにはいかない。

そう思った私はそれらの感情を持ったまま、純粋な気持ちで誠意を尽くしてY君と面会した。
自分の想いを素直にぶつけ口説いてみせた。
その最中はエネルギッシュに溢れた会話が出来て彼との波長も合った。

人生で初めて口説いた相手が男だったのも変だが、自分なりに納得できた体験に満足だった。

Y君も前向きに返答しますと言ってくれた。

しかし、結果はどうであれ今回のプロセスで発見した事の価値が大きかった。

これからはヘッドハンティングも視野に入れ、この人物だと思った人材をエネルギッシュに口説いていこうと思っている。