タイミングが咲いた

友人iが食事に招いてくれた。

アントニオ南青山本店、三代続くイタリアンレストランで、日本で70年間続く老舗の中でも本丸として人気を博している。

立地の利便性は低いが六本木通りと駒沢通りが交差するあたりに位置している。
表参道から歩くには15分は要するだろう。

休日の少し早いランチタイムにも、周りを見渡すとカップルや親子連れで賑わっていた。
iは馴染みのようで、三代目の当主がテーブルまで挨拶に見えた。
まさに、アントニオそのものといった感じで、ワイルドなイタリア人の血を引く若者だった。

料理はサラダが絶品を極めていた。
レタスとトマトを中心としたシンプルな組み合わせだが、フレッシュで甘みのある野菜はかなり高い評価だった。
iはかつて、このサラダを2つだけオーダーしたと言う。
少食の彼ならそれで充分だろう。

デザートのティラミスを注文した後、このあとの予定を互いに話した時、iの興味深い行動に思わず聞き耳が立ってしまった。
私はアマン東京でティータイムを過ごす予定だったが、時間をずらしてiと行動を共にする事になった。
タイミングが咲いた瞬間だった。

iの古い師匠的な存在であるM氏に会いに行くため、私も同席することになった。
iは月に一度はM氏と面会しているようで、彼のビジネスに対する相談役としてのパートナーシップのようだ。
私が注視したのは、M氏の卓越した能力に惹かれてのことだった。
iの体験談を聞いていると、自分に対する指摘が的確で、伸ばす方向性と修正すべき項目が明確になっている。
つまり、自分自身が無意識の領域に押し込みた心理を引き出し、顕在化した事象を持って説明しているようだ。

渋谷へ向かい、あるカフェでM氏が来るのを待っていた。
荷物をたくさん持ったM氏がiに微笑みかけて席に着いた。
M氏は初老であったが、エネルギーが常人と違っているのが一目見てわかった。

しばらく雑談したあと、私の見立てをしてくれた。
それは、最近自分自身でも薄々感じていた事だったが、あまりにも無意識領域のため、それが認識出来なかった。
というよりは、正体を暴かれたと言う方が的確のようだ。

実に腑に落ちる、ズバリと指摘してくれるが故に、納得感がMAXである。

自分自身の癖、無意識に葬っているそこをどうすればいいか、実にシンプルに指摘してくれた。
このタイミングで来たか!率直な感想である。
まさにタイミングが咲いたのだった。

iから食事に招かれたきっかけで、その日にこんな事が起きるのは仕組まれているのだろう。
ラジオの周波数がぴったり合ったように。

しかし、癖を修正するにはそう容易くはないだろう。
恐れがふっと湧き出していつもの癖を無意識でやってしまうかも知れない。
いや、慣れるまでは普通に出してしまうだろう。

そんな事を考えながら渋谷の人混みをゆっくりと歩いていた。

強い信念

LINEを見ると娘からだった。
モデルのオーディションの最終選考に残ったとの知らせで、明日の夕方にプロダクションのオフィスへ一緒に行って欲しいとのこと。

彼女は16歳になるが、引っ込み思案な性格でモデルには向かいと思っていた。
しかし、昨年からオーディションにトライするが落選するも、諦めないで再挑戦している。
夢を諦めない強い意志は非凡なものを持っているのかも知れない。

表参道から骨董通りを歩くと六本木通りの手前にプロダクションのオフィスがある。
前回のオーディションは面接官9人の前で大緊張したそうだ。
質問にもハッキリと答えられなかったので、本人は落選を覚悟していたそうだ。
確かにそれは私にもわかる。
ただでさえ自己表現が苦手な上、オーディションの本番でしかも9人の審査員を目の前にしたら、コチコチに固まって黙ってしまっても不思議ではない。
私は合格した要因を知りたかった。
競争率27倍に勝ち残った真実が何かを。

オフィスに通されて2人の若い男性スタッフと対面した。
私はなぜ彼女が残ったのか質問した。
すると、ズバリ顔だと言い放った。
今時の顔でモデルの素養はあると見立てたようだ。

私はすかさず質問した。引っ込み思案で自己表現な下手な娘がいくら今時の顔で可愛いとは言っても、それは決定的な要因ではないかと。
すると、自分を変えたいという強い意志があれば、全く心配いらないです、むしろ雑誌の写真やステージに立つ中で、見られたり撮られたりする過程で、克服した例はたくさんあると言う。
プロダクションの視点は完成した人より、磨き上げて作品にする方に注力している。
もちろん彼らの目に止まる何かがないと駄目だが、目利きでそこを武器に伸ばして短所を克服するイメージである。

私は彼らに同調し熱く語りかけた。
全くその通りで家の中ではまったく違う彼女がいて、充分過ぎる位の自己表現をしている。
つまり、他人に対して力を発揮出来ないだけで、何かのきっかけで人見知りや他人に対しての恐怖心の壁は突破できるのではないか。
何よりモデルになりたい強い信念がありますから。
何とかプロダクションの力で彼女の潜在力を発揮して欲しいと。

私が言うまでもなく、彼らは可能性から発想していた。
最終選考は本人と親の同意を兼ねたもので、プロダクションとの契約は織り込み済みだったのだ。

早速、来週からプロフィール写真の撮影をスタートすることになった。

あんなに引っ込み思案な彼女がここまで来るとは思わなかった。
何度挑戦して失敗しても夢を諦めない、自分は出来るという信念がここまで成長させたのだろう。
しかし、ここからが本丸のスタートで、実際に仕事のオファーがきて上手く回る循環が作れるか、また新たな壁を乗り越える時期が来るだろう。

売り手と買い手

日曜日のお昼、モスバーガーの繁盛ぶりに感心しながらコーヒーを飲んでいた。
家族連れやカップル、シマホをいじっているシングル、あとはテイクアウトのお客さんが多いのが印象的だった。

モスバーガー側から見ると安全な食材をフレッシュに旨さを追求した商品を提供し続ける、この想いがブランドとして浸透している。
一方で、お客さんは安心な食材で清潔感のある美味しいハンバーグやチキンを食べに行く、こんな想いで店に来ているようだ。

売り手の想いと買い手の想いが見事にマッチしている。
ドラッカーの名言には、それがほとんどマッチしている会社はない、と言い切っている。

最近、友人がスーツを仕立てたとの連絡があった。
元は私を通じて知ったのだが、そこの会社の理念や考え方に共感したから注文したと言っていた。
私もそれを聞いてスーツを買おうという気持ちになった。
スーツのsadaである。

早速、店に行って仕立ての注文をしていた。
すると、次々とお客さんが入ってくる。
閉店間際に5人ほどの来客に店長はてんてこ舞い、採寸したり仕様を決めたりするプロセスがあるので、1人体制では追いつかず他店から応援を要請していた。

私は何でこんなに流行っているのか店長に質問した。
すると、工場を自社で持っているのが最大の強みですときっぱりと言った。
通常はお客さまから注文を受けて、下請けの工場へ発注するので、その分コストが上がる他、実際に製品を作るのが自社で完結する事で、作り手と売り手が同一化している。
従って、B→B→CからB→Cの構造になるので、シンプルに会社の理念や商品に対する想いがお客さまにダイレクトに伝わる。
つまり、売り手の想いと買い手の想いがマッチしているのだ。
買い手は品質の良い商品を安くオーダーメイドで購入できる。
29800円からと、体型に関係なく作れるのでsadaファンがリピートと口コミにより拡散しているのだろう。

実にシンプルだが、売り手側の勝手な解釈で自分達の技術やサービスを一方的に押し付けている場合が少なくない。

経営参謀の代表A氏から提言された言葉が腹に落ちた。
早川さん、天然村はやっている取り組みや理念は素晴らしいが、それだけでは多くの方々の行動には結びつかないですよ。
楽しさや、面白さみたいなワクワク感が人を動かす要素の最も大きな表の顔、素晴らしい取り組みや理念は裏の顔だと。
本当に素晴らしい場所なのにもったいないですね、彼は実際に天然村に来て体験しているので、1人のお客さまとしての率直な想いなのだ。

互いの想いを一致させるのは、矢印を自分に向ける必要がありそうだ。

働き方

オフィスで打ち合わせをしていた時に突然と現れた人物がいた。
アゴラというオープンスペースだったので、直ぐに産休中のOだとわかった。
元気な赤ちゃんを連れたOは母親になって久しぶりに私の前に姿を見せてくれた。
彼女はエンジニアの要素を合わせ持ち、マーケティング事業部に所属し、技術屋としての得意技を持つ人物である。
彼女が育児をしながら、職場復帰するまでのリハビリ期間をどのように設定し、準備運動をリモートワーク出来る仕組みにし、軌道にのるまでの働き方を会社としてバックアップしたいと考えている。

育児と仕事の両立は、働き方を柔軟に対応する事と、ビジネスモデルを多面的に捉える事で、今ある資源から新たな価値を持つビジネスに発展する可能性がある。

イコムにはもう1人育児休暇中のR、ご主人が宮崎県に転勤になり現地からリモートワークしているSがいる。
Sも育児休暇に入るのも自然な流れだろう。
また、Yは来月に挙式を控える新婚で、女性が多いイコムにとって、持続可能性ある女性がエネルギーを無駄に消費しないような、効率化した取り組みにチャレンジしている。

一方で、型と型血という区別は別な領域として存在するのは見逃せない事実である。
それは、型が出来上がらないうちは、次のフェーズに移行しても通用しないという現実がある。
例えるなら、スポーツの野球やサッカーなども、最初は基本を徹底的に習得するために、同じプロセスを反復継続することにより型が仕上がる。
これは、3年は絶対やる期間として定めるのではなく、あくまで目安とする期間であって、個人差があるので、習得が早い者はその限りではない。
これは、現代スポーツの世界でも当てはまるだろう。

型が出来たら、型に血を注ぐために自分なりの型に昇華するフェーズに入る。
野球やサッカーも一流選手は型にはまったスタイルではないのが魅力として映る。
ビジネスマンも型が出来て、そのまま血を注ぐことなく何年も過ごしている、ただの人は多いだろう。

イコムでは、型血として個を表現するのは基本的に無制限にしている。
もちろん、OBゾーンは設定しているが、個性を発揮するのにくだらない決め事は一切廃止している。
決まった時間に出社したり、お昼時間にランチをするとか、皆んなと一緒の働き方を推進していない。
従って、タイムカードなし、日報なし、直行直帰当たり前、いつ何時休みOK、髪が金髪の女子、ロン毛&ヒゲの連中がオフィスにいたりするので、慣れない人が会社に来ると、その自由さに驚く方が少なくない。
また、外国人採用をしているので、今後はアフリカ人やインドやイスラム系の若者が混在しているオフィスになっているだろう。
それはまるで、六本木の無国籍料理店が朝まで賑わっているごとく、エネルギーに満ち溢れた
オフィスになっているだろう。

型血に昇華した個の立った集団はどこまでいくのだろう。
電車に乗りながら妄想して薄笑いを浮かべていたら、前に座っていた女子高生から異様な人物を見る視線を感じた。
私は、意に介さず妄想を続けた。