サードマン

危ない! 助手席からの声に思わず飛び起きた。

ゴルフの帰り道、高速道路を自動運転中にすっかり眠っていたようだ。

目を開けると目の前に鉄の塊のような物体があった。
やばい、一瞬の判断で急ハンドルを切り、間一髪障害物をかわした。
ところが、バランスを失ったと同時にハンドルを取られた格好になり、コントロールが効かなくなった。
本当にヤバイぞ、壁に激突するのも覚悟し、肝が冷えた。

その後の記憶は吹っ飛んでいた。

気づくと安定して走行していた。

いったい、何が起こったのだろうか。
後部座席の知人は急ハンドルの反動で肩をぶつけ、助手席の友人も呆気にとられた様子で、言葉を失っていた。
後部座席の知人にはシートベルトの着用を促していたが、窮屈なのを嫌ったのかシートベルトを締めていなかったために、反対側の窓に激突してしまった。

しばらくして、皆落ち着いてきたので、何が起こったかを話し合ってみた。
まずは、自動運転を全面的に信頼して居眠り運転をしていた私が1番悪いという事になった。
まったくもって異論はない。
AIは、車意外の障害物の認知はまだ学習中なのだ。
あのまま突っ込んだら、その衝撃と共に大惨事になっていたかも知れない。
しかし、何でまた高速道路に鉄の塊のような物が落ちているなんて、落下物では済まされないのではないか。
私はぶつぶつと独り言を言いながら、自動的に正当化している自分を観察していた。

しかし、完全にコントロールを失っていたのはハッキリと記憶している。

その後、数秒間は3人とも記憶が飛んでいる。
後部座席の知人が反対側まで移動するほどの負荷がかかっていたのだ。
明らかに車体が傾いた状態になった事は間違いない。

それはまるで、光の中から突如現れたサードマンが救助してくれた光景のようである。

明らかに説明のつかない世界である。
ヒマラヤ聖者の世界、宇宙の知られざる真実の領域かも知れない。

そんな何とも言えない空気の中、もう自動運転中に手放しで安心して居眠りするのは、絶対にやめようと決意した。

アメリカでは、そんな状況でトラックに突っ込んで死んだ実例がある。

AIはもっと場数を踏んだら、スマホで送り迎えが可能になる日も近いだろうが、突発的な判断を迫られた場合のミスもある程度は許容する度量が必要だろう。

AIもサードマンを味方につけるといいだろう。

キャシュとデット

嵐の湯三郷店に久しぶりに行ってきた。
ふと、周りを見渡すと建売住宅を建築している職人さんが忙しく動いていた。

住宅を購入する人はいつの時代でもいるのだろう。
かつて更地だった場所は住宅地に変わっていた。

しかし、住宅ローンを組んで買う人が大半を占める。
私は絶対的な賃貸派だ。
住宅ローンを組んで買う人のロジックは、月々の支払いが家賃並みで買えるのだから、賃貸物件を借りるより資産が残る方が賢明との判断である。

それは、キャシュ(現金)とデット(負債)のバランスで成り立つ。
住宅ローンは明らかにデットの割合が大きく、バランスが大幅に欠けている。

嵐の湯に入りながら、かつての苦い経験を思い出していた。

嵐の湯大宮店を会社の新規時業として始めたのが約9年前だった。
オープン当初3日間は無料キャンペーンでお客様はごった返す一方で、夜間の人手が足りず私も現場に出て、フラフラで朝出勤するという日が続く有様だった。
1年が経ったころ、当初の計画にあったキャシュには遠く及ばなかった。
また、デットは億の単位、明らかにバランスを欠けていたと同時に、この状態を続ければ会社全体に及ぼす影響が大きくなるのは明白だった。
今、撤退すれば全体の3割ほどのダメージで済む。
オープンから1年半で嵐の湯大宮店は閉店した。

最近、飲食店の入れ替わりの激しさに驚かされる。
1年ほどで変わるのも珍しくない。
3年経つと生存率は50%に達する。
明らかにデットのバランスが大きいためである。
最初の1店舗は、初期投資を抑えてキャシュとのバランスを鑑みる、そのサイクリングを経て次に行くなら生存率も上がっていくだろう。

この構造は会社も個人も変わらないだろう。
会社が倒産する決定的な要因は、キャシュがデットを賄えなくなるポイントを迎えた時に臨終になる。
これは、私が見てきた限りで明らかな事実だ。

個人でもキャシュを生まない住宅を購入するにはデットが大きい。
それを賄う自分の収入は、将来にわたって安定的なキャシュとしてあてに出来るだろうか。
この大きな大変革期にそれが通じるとは思えない。
家賃は負債ではない分、キャシュとのバランスが立つ。

現金で買える人ならともかく、普通の人は賃貸物件をうまく活用する方が時代に合っているように思う。

社員の結婚式

そこは30年ぶりに訪れた場所だった。
私が初めて友人の結婚式に出席した人生初の式場である。

イコムの女性社員Sが入社2年目の早さで愛でたく結婚した。
お相手は地域の金融機関で年齢も同じ、若いカップルとその友人がもたらす若さのエネルギーを感じさせる披露宴だった。
友人関係を含めると120名ほどのたくさんの人達が祝福してくれていた。

ここ2、3年で女性社員の結婚式に出席する機会が度々あった。
婚姻後まもなくして、ご主人の転勤でマレーシアに行ってしまったり、九州の宮崎へと離れて行ったことから、私は女性社員の結婚に対して少し複雑な気持ちを持っていた。
また、出産のために産休に入っている女性社員も2人いる。

今回の披露宴で主賓の挨拶をさせていただいたが、正直な私の気持ちを含めた内容の話しをした。
Sから話しを聞いていたことは、主婦の役割を夫にやってもらうことを想定していて、それとなく夫にも話しをしていると言うことだった。
また、結婚に至った経緯も事前に聞いていたことが、果たしてどこまで事実なのかを新郎から直接聞きたかった。

私は挨拶の途中で新郎にヒアリングした。
ある日、何となくブライダルフェアがやっているので、車を見るような軽い感じで行って見たら、何とその場で挙式が決まったとSから聞きましたがそれは本当ですか?
すると、新郎は苦々しく決断せずに居られない雰囲気にのまれてしまいました。と正直に答えてくれた。
やはり、Sが描いていた策略にまんまとハマった格好になったわけだ。
さすがにそこはスピーチにはしなかったが、新郎の苦々しい顔が印象的だった。

また、主婦の役割を担う話しを振ってみたが、それはゼロではないです。と言うにとどまった。
それはそうだろうと後から思った。
仮にも私が主婦の役割を果たしますなど宣言したら、ご両親もそうだが勤務先の方々にも面目丸つぶれになるだろう。

披露宴で気になったのは、写真をやたらとたくさん撮るシーンがあったことだ。
新郎新婦と一緒に写ろうと次から次へとスマホを持ってやってくる。
新郎が汗をにじませながら作り笑いをしている姿に違和感を持った。

恒例の両親への手紙はメインイベントで、新婦が涙を見せるシーンはやはり感動的だった。
新婦の父親は涙を見せることはなかったが、私が逆の立場だったらどうなってしまうかと想像するに、それは娘に初めて涙を見せる場面になり、号泣して周りなど気にせず子供のように声を上げてしまうだろう。

今年も新たに挙式の知らせが届くかも知れない。
次は誰だろう。
M16の情報筋からある人物の名前が上がっている。

新年の下町と山の手

墓参りの途中、歩きながらふと思った。
見慣れた街のはずが、情緒ある雰囲気を改めて感じていた。
最近は妙に下町が気に入っている。

北千住は生まれた土地で幼いころから馴染みのある街だが、下町といった意識はまったくなかった。
人情味や活気を肌で感じるのは、下町の独特の文化みたいなもので、自然と近所の人達と親しくなれる。

一方で、山の手は住宅地や商業地にしても何か見えない線があって、一通りの挨拶をしたり世間話しはするけど人情味を感じた事はない。
人々が集まる意味では活気は感じるが、下町の活気は一体となったものに対して、山の手は個がそれぞれ別々になっているように感じる。

特に顕著なのが、商店街にそれを見て取れる。
北千住の東側は再開発がされていないため、駅から続く商店街が昔のままで50年以上やっている店が少なくない。
八百屋、肉屋、総菜屋、中華店、洋食屋、などなど個店が並び、花屋さんから文房具店まで生活するのに事欠かないばかりか、大きなスーパーがなくても不便を感じない。
豆腐一つ買うにも専門の豆腐屋さんがあるので、一つ一つ買い物をするのに個店の主人と喋りながら歩いて回るので、必然的に商店街と住民の一体感が生まれるのだ。

最近は駅ナカの商業施設が充実しているので、そこでコンパクトな惣菜をいくつか買って自宅で直ぐに食べれるから、すごく便利になっているし私も成城石井の惣菜はお気に入りの品がいくつかある。
山の手はこんな感じなので、個人がそれぞれチョイスした品をレジに並んで精算する仕組みが効率的になっている。

北千住の商店街を歩いていると、洋食店や中華店を見る度に入ってみたいと思わせる雰囲気を感じる。熟練のシェフが代々受け継いだ秘伝のタレやスープが歴史を感じる趣のある店内で、より一層味が引き立つのは、下町の最大の魅力かもしれない。
創業60年の焼肉屋に初めて行ってきた。
メニューもタレもどこにもない、凄い店だった。

六本木のグランドハイアットで朝早い時間にテスラを充電する機会があった。
車の充電が終わる30分、二階のレストランに入り朝食をした。
7時くらいだったが、周りは外国人しかいなかった。
とてもリラックスできる雰囲気の中、ヨーグルトと中華粥を注文した。

こんな感じで、新年を下町と山の手で共に暮らしてみると、それぞれの特徴が魅力的で暮らしをそれぞれ体験することに意義があるように思う。
まさにhabitationスタイルで、イコムのタグラインの一つである、複数の拠点を行き来するライフスタイルになる。
私自身もこれを実践しているので、普通の日常になっているが、下町は生まれ故郷でもあり、
もっと深掘りしても良さそうな気がしている。