名古屋と行基寺

友人から聞いていた話は、現実現場をこの目で確かめてから初めて明らかになった。
一緒に行こうと話をしたのは三年ほど前。
名古屋に行く機会があれば、是非とも見てもらいたい景観がある。
その言葉が脳裏に焼き付いていた。
会合が名古屋で開催されたので、これを機に行ければと思っていた。

「行基寺」名古屋から車で約1時間、300年前から江戸時代の松平家の山城として歴史をもつ寺だった。

それは、まさに天空から見下ろす景色のごとく、この目で見ない限り、この感動は決して伝わらないだろう。
寺の障子を開けた窓からは、名古屋市街地、岐阜県の大垣市、三重の桑名市まで一望で見渡せる、絶の景観である。

別次元に移行したかのような空間にしばしば時間を忘れて見入っていた。

些細な事で悩んだり、苦しんだり、怒ったり、喜んだりしている世間が垣間見えるようで、日常を振り返ると、いかにミクロの世界の出来事に感情をぶらしているのがわかる。
改めて大マクロから振り返る機会になった。

それは、東京ミッドタウンの52階から見渡す景観とは決定的に違う。
もちろん、ダイナミックな面はあるが、行基寺から見るそれとは明らかに違っている。

緩みや揺らぎといった感覚、そして、風や空気を感じて見下ろす景色は、日本の原風景を表しているようで、静粛の空間からは心の状態が落ち着き払っているようだ。
それは、天然村にいる時に感じる近い感覚があった。

名古屋市街に戻り、帰る時間までに何を食べるか前日まで迷っていた。
名古屋の友人に聞いてみたが、一発回答で熱田のひつまぶしの店が返ってきた。
店まで行く道中、「きしめんと酒」のれんが目にとまり、風情のある店構えに妙に惹かれた。

そこは立派な料理屋だった。
早めについてしまったと思いきや、開店までの16時30分までに40分近くあるのに行列が出来ていたのだ。
市街地から外れた閑静な場所に行列が出来ている様子は、その店の実力を示しているようだった。
店員さんに聞いて見ると、週末はこんな感じだが、平日は並ぶまでにはならないという。
肝焼きはともかく、肝煮、肝揚げ、肝酢など、今まで目にしたことのない鰻肝料理のバリエーションだった。
どれも素材を引き出した実に味わい深いものだった。

締めには「蓬菜軒本店」名物ひつまぶしを堪能し、名古屋をあとにした。