武器

新宿の鳥茂で待ち合わせをしていた。

席に着くと間も無くしてNが現われた。

久しぶりの再会だった。
イコムを退職して8ヶ月ほど経っていた。

彼は新卒一期生、今年で10年になっていた。
その間に新卒の後輩と結婚して子供が生まれた。
奥さんは、産休後の3ヶ月前から仕事に復帰している。

酒を酌み交わし、様々な話しをした中で印象に残ったことがある。
Nはアウトドアのコンテンツを配信する企業に転職した。
今は編集長になっていて、彼の実力を存分に発揮しているようだ。

転職して1年も満たない中で、上司から認められた要因は何か尋ねると、掃除だったという。
イコムで学んだ「徹底した清掃と明るい挨拶」これを実践してきたおかげで、自然と身に付いたことが、誰よりも早く会社に出勤して、徹底した清掃をやる。
シンプルにこれを続けていたら、編集長に任命されたそうだ。

イコム在籍当時のNの上司は今でも語っている。
皆んな、冬にもかかわらず汗びっしょりになって掃除をしている。
Nが模範となり毎日コツコツ続けていた。
これがイコムの文化で他社にも誇れることだと。

それを自ら証明させたNを誇りに思う。
外に旅立ち、イコムで学んだ教訓を生かして、新しい職場で発展している姿は本当に嬉しく思う。
新しい風をもたらし、会社や働く人々に良い影響を与えて更なる進化を遂げて欲しい。

Nも小供が生まれ一家の主人としての責任を感じているようだった。
それは、武器を持つ事で将来を担保することにある。
Nは編集長として成果を出す事で武器を得て、業界での地位を確立して、例え今の会社がなくなっても、どこでも必要とされる実力をつけること。
それが、編集長としてのポジションから可能になったと話していた。

武器を得る事によって、ようやく思う存分楽しんで戦えるような印象を受けた。
武器は更に磨きをかける事で強靭なものになるだろう。

今はお小遣いが月3万円だそうだが、彼なら武器に磨きをかける事で数十倍になるだろう。
長年彼を見てきて確信できる。

そして、調子に乗ってキャバクラで遊んでいると、勇み足で奥さんに叱られて減額されるだろう。
これのいったりきたりは容易に想像できる。

但し、誰かのような完全に土俵を割ってしまう事はないだろう。

前世

南イタリアの貧しい小作人だった。
ナポリとシチリアの中間辺りに位置する村で、小作人は地代として収穫物を地主に全て収めてから配分される仕組だったようだ。
従って、労働集約型のため充足感ある生活とは縁遠かったようである。

しかし、いつからか村のコミニティを拡張する都市計画なるものに取組み始め、更に選挙に担がれるようになって、具体的な都市計画に踏み込もうとしている最中に恨みをかって殺されたようである。

今世において、前世の影響は少なくないようで、前世の課題を持って誕生するようだ。
更にそれを克服すると次の課題があり、それにトライするというサイクルになっているようだ。
つまり、前世の課題要因を明確化することで、今世を有意義に過ごす事が可能になる。

まずは、小作人という立場を考えてみる。
自分の地面が欲しい、土地を所有して地主として欲求を満たしたい。

これは、今世において不動産を職業にした事は非常に意義深い。
そして、貸主として家賃をもらうような仕組みに変えてから、会社の業績が飛躍的に伸びて安定化したことに起因する。
仲介業を主体としていた時期を振り返るとそれが如実にわかる。
自分の地面を所有し、地代を受け取る事で前世からの欲求を今世において満たすことが出来たのである。

また、村としてのコミニティの拡張は、今世において天然村を通じて取り組んでおり、これからの戦略上、充分に前世の欲求を満たす事を実施しているのだ。

こう捉えてみると、無意識にやっていたのが、実は魂レベルでそれらを選択しているのを実感する。

そうすると、今後の展開はどうなるのか、あるいは来世に向けた取組みは、今世の課題になりうるものは何か、このあたりが気にかかる。

だが、しょせんは小作人からの成り上がりであり、それを充分認識する必要があるようだ。
小作人は、経済的に不安定だったので、常にランニングコストを気にする。
また、大きな買い物より小さな買い物に注意深くなる。
従って変なところがケチになる。

また、前世で選挙に担がれた経験から周囲から褒められたり、持ち上げられて殺された経験から、今世は、周りから承認されたり、褒められたりすると妙に心地悪くなる。
本当に居心地が悪くなるのだが、まさかそこから来ているとは驚きである。

前世が南イタリアの貧しい小作人、今世は日本人の不動産業として地主になっている。
次の展開は海外のようで、ヨーロッパ、アメリカが舞台になりそうだ。
プライベートでは、地中海を眺める別荘を手に入れ、ハビテーションをしているだろう。

次男が来月からニューヨーク入りして友人の会社に就職することになった。
すでに、魂が動き出している兆候があり、ビジネスも次のフェーズに移行するようである。

近い未来には、AIがゲノムを解読するようになれば、容易に想像できるようになるかも知れない。

すごいパン屋

お盆休みの朝はゴルフ観戦から始まった。
全米プロゴルフ選手権、いわゆるメジャー大会の一つが中継されていた。
早朝4時から松山選手の快進撃に一喜一憂しながらテレビを見ていた。
終盤になりここからと言う時に、決まって中継時間が終わりになる。
何とかLiveで見れないかとアプリを検索してみた。

すると、ゴルフネットワークのアプリが見つかり、早速ダウンロードすることにした。
これは、非常に価値があり臨場感もあって、CMも入らないので試合終了まで楽しめる。

しかし、しばらくするとソフトバンクより通信速度を低速にするとの告知があり、最初は何の事かわからなかったが、動画を見たのが要因して契約容量をオーバーしたようだ。

せっかく有料会員になって存分にゴルフ観戦を楽しめるようになったのもつかの間、低速だと動画が映らなくなり元の木阿弥に。
一方的な措置に憤慨するも、休み明けでないと対応出来ないため、TV中継で諦めるかと思った時にテザリング機能を思い出した。
手持ちのIPadで共有することで見事に動画を復活させた。

ゴルフ中継が終了するのが午前8時ごろ、それから毎朝のルーティーンをスタートさせると、終わるのが午前中いっぱいになる。

今日はそれからあるパン屋に行くことにした。
それは、友人御用達の店でパリのどんなパン屋より上をいく店で、おそらく未だかつて味わったことのないパンに出逢えるだろうとのこと。

早速、行ってみると案の定の行列、12時開店16時閉店という短さもあってか、品切れになる前に買い付けようという心理が働いている。
約40分ほど並んで店内に入れた。
オープンキッチンの手前にフランスパンのような品揃えのカウンターテーブルがある。
そこでチョイスしたものをお会計するのだが、何とグラム買いの表示に我が目を疑った。

それはまるでいきなりステーキのごとく、熟成肉がグラム単位で食べられるように、パンがグラム3円や4円の価格で提示されている。
出来るだけたくさんの種類を賞味したかったので、適当な量で数種類の見立ての良いやつを注文した。
とはいえ、パンを何グラム欲しいと言っても、それがどの位の量になるのか見当もつかなかった。
お勘定は締めて7000円、パン屋でこんなに買ったのは生まれて初めてだった。

一体どれだけの代物か、とにかくいち早く食べてみたかったので、車に乗り込むや否や袋から取り出すと一つのパンを口に含んだ。

驚愕の喜びが湧いてきて、パンの概念を覆す芸術的な作品の域にあった。
パリのクロワッサンに感動したレベルをはるかに超えるものだった。
外側は歯ごたえがあり、中はふっくらと味わい深く、普段パンを食べないが何個でも食べたい欲求が湧いてくる。
自家培養した発酵種を使い、熟練工の配分で小麦粉を使って焼いたパンは生きているかのような発酵しているかの状態で、数時間経っても暖かく美味しくいただける絶品。

かつて紹介してくれた友人がパン職人を同行させたら、声が出ないほどの圧巻だったそうだ。

日本にこんなすごい店があるなんて、世界に誇れる素晴らしいパンを食すことが叶った。

友人から安易な触れ込みを控えて欲しいとの要望から、世田谷にある店で留めておきたい。
ご縁がある方には直接お伝えしたい、すごいパン屋だった。

歌舞伎町の女王

朝目覚めると直ぐに起き上がる事が出来なかった。
昨夜の出来事をしばらく回想していた。

長女から友達とパパで飲みに行こうとLINEがあった。
友達は幼馴染で昔からよく家に遊びに来ていた。
今はすっかり大人になり、可愛さに少し色気のあるオーラをまとっていた。

以前、会社の帰りに飲みに行った際、今度キャバクラに連れて行って欲しいと娘から言われていた。
綺麗な女性を間近で見てみたいらしい。

西新宿の鳥茂で待ち合わせをして生ビール、ハイボールで乾杯した。
仕事の近況や昔話に3人で盛り上がりながら店を出た。
相変わらず、ここの生肉は格別のうまさだった。

キャバクラに行く前に行きつけのBARに寄った。
実力派のバーテンダーが創り出す空間、カクテルの芸術性を体験するために、世界中から外国人がやってくる凄腕の店である。
娘達もこの異空間には驚きの様子だった。
ちょっと場違いな面も否めなく、バーテンダーのK氏から援助交際と間違えられる始末。

娘のリクエストに答えて、歌舞伎町に行ってみたいキャバクラがあるというので入ってみた。
AKBや乃木坂と言ったアイドルグループの頂点を極めたような、トップアイドルキャバ嬢がいるらしく、一目見たいとの強い想いにほだされてしまった。

ご指名のトップアイドルが登場し、娘の隣に座ると感極まり、まるで有名女優に会ったかのような有り様。
この世界で名を馳せているキャバクラの女王は、愛想笑いを浮かべながらも、娘たちのリクエストに写真を撮ったり、LINEの交換に応じていた。

確かに超小顔で目が大きく、自信たっぷりの表情はカリスマ的な在り方、おまけにハーリーウィンストンの時計にアクセサリーを身に付ける姿は歌舞伎町女王そのものといった感じである。

ところで、どんなご関係ですか。
女王が娘に尋ねると、リアルパパなんです!
アンリアルなパパが普通になっている世界なのか、リアルパパと言った単語が妙に新鮮に響いていた。
リアルパパの組み合わせに彼女たちも呆気にとられているかのようだった。
珍しい組み合わせらしい。
盛り上がっている最中、娘が突然言い放った。
パパ今日はつまらない!
どう返していいやら、キャバクラに娘と娘の友人と一緒にきて、リアルパパとの紹介を受けて本来どの様に楽しんだら良いのか、一瞬考えてしまった。

しかし、耳をダンボにしてパパの話しを聞いている娘と一緒にキャバクラではじけるのは、かなり難易度が高いのかも知れない。
こちらとすれば、娘たちが楽しんでくれたらそれでよし、パパが率先して楽しむつもりは一緒に来た時点で違う次元にシフトしている。

その後、次のトップアイドルの店をいくつかはしごした。
そこでも同じ様な展開を繰り返し、トップアイドル嬢と共にシャンパンを空け、女子会のような雰囲気の中、リアルパパが混ざる展開に、もはやキャバクラに飲みにきている感はゼロ。
しかし、お会計はしっかり正規料金、もしかしたら女子優遇の料金体系をつくれば、娘のような憧れの存在に会いにくる女子も現れるかもしれない。

歌舞伎町の女王たちを思い出しながら、いつもの朝を迎えた。