芯漆

そこには漆の達人がいた。

銀座「黒田陶苑」友人が紹介してくれた。
輪島から漆の職人が展示会を開催しているというのでやってきた。

そもそも漆にさほど興味があったわけではないが、能登の友人の話を聞いて興味が湧いた。
地元に人物がいて銀座に来ているという。
漆職人のY氏は漆の樹液だけを使って作品に仕上げているのだ。
本来の輪島塗りなどの漆塗りの品は、原型を木材としたものに表面を薄く漆で塗っているのが一般的である。
つまり、樹液だけで作品に仕上げた芯漆では、膨大な時間とコスト及び類稀な技術を要する。
ぐい呑一つにしても、漆の木を3本、約20年かけて仕上がるというから、もはや気が触れていると思われても仕方がないだろう。

実際に商品を手に取ってみると、鮮やかな光沢と引き込まれる魅力があって、お金では買えない価値があると感じた。
Y氏はこの技術の芯漆を世界に広げ、日本の漆文化をパリやニューヨークの美術館から発信したいと言うヴィジョンを熱く語っていた。
その熱意と本物に出会えた喜びで思わず買ってしまった。

実際にウイスキーで試してみると、グラスで飲むのと比べ、芯漆ではまったく別のウイスキーになってしまう。
本当に同じウイスキーかと思うほど、まろやかな味に変わっている。
おそらく、漆の樹液の周波数と同調するかのように、ウイスキーの原子が変換されるのではないだろうか。

芯漆の商品を買ったお客様の中には音楽が聞こえてくるという方が数名いらっしゃるという。

本当にすごいものに出会えて嬉しくて泣きそうである。

永遠の家宝として、早川家に代々受け継がれることになるだろう。