緊急着陸

ウィーン発ANA NH206便で羽田へ帰る途中だった。
機内アナウンスより緊急着陸の案内があった。

その時点では詳しいことは明らかにはしなかったが、近くのロシアの空港へ着陸するという。

羽田着午前6時30分を予定していたが、2、3時間は遅れるだろうと思っていた。

すると、しばらくして機長からアナウンスがあった。
エンジンオイルが漏れていて、羽田空港までのリスクを回避するためだと言う。
最寄りのバハロック空港までは着陸に問題ないが、羽田に到着するのが、午後9時を過ぎるとの言葉に一瞬耳を疑った。

そこは民間の空港とは思えないほどひっそりしていた。
人が誰もいなくロビーは我々206便の乗客だけでいっぱいになるほどの狭い空間だった。

それはまるでハイジャックで人質になったような気分、GoogleやLINEが一切繋がらないのだ。
Googleマップで位置確認を試みたがまったく機能せず、無愛想なロシア人が数名いるだけの不気味な空港だった。

ロシアとしては情報を周波数でコントロールしているのだろう。
何とそこに13時間以上待機することになったのだ。

ウィーンからここまで約10時間のフライトだったので、みんなヘトヘトになっている。

ANAからの説明では、羽田から代替え便を手配するため、時間がかかると言うが、もろもろの手続きに時間を要すると言っても何でそんなに時間がかかるのか、まったく理解できなかった。

しばらくすると、ロシア人が入ってきて点呼を取っている。人数が少なくなっていないか確認して、どうやら入国するのを用心深く見張っているようだ。

それはEU諸国の国境を自由に素通りできたことに比べてまったくの別世界。
おまけにジュースを買うにも、ユーロは使えずロシアルーブルの現金のみ。
自由な世界から一転してしまった。

しかし、206便の乗客の皆さんは不自由な空間の中でも、明るくおしゃべりしたり、トランプのゲームをやったりしながら陽気に振舞っていた。
現状の不満を言うより、この状況をいかに充実して過ごすことができるか、それは本人次第だろう。
日本人あっぱれ、そんな気持ちになった。

最後は、羽田からANAスタッフも駆けつけて1人8万円のお見舞金を全員に支給し、CAの方々も終始お客様の立場になって対応なされていた。

今回の緊急着陸は過酷な体験ではあったが、何事もなく無事に帰国出来たことに感謝したい。