剣の達人

湯河原にある友人の別荘に招かれた。その日は夜釣りをやっていると言うので私は夜の11時に現地に到着した。少し休憩してから釣り場へと向かうので、まずは近所の料理屋に案内され、先ほど釣り上げたというアジとアオリイカを刺身でいただいた。
同じアジを食したと思ったが片方は新鮮さがあるアジ独特の食感とは違っていた。主人に聞いてみると取れた場所で違いが出てくると言う。アオリイカは剣先部分がコリコリとした食感で釣りたてならではの美味しさがあり、特に吸盤の部分は絶品だった。
テーブルを囲む面々は初対面の2名を含む6名であった。その中に剣の達人と言われる人物がいた。
剣道7段で元日本チャンピオンであった。歳は私と変わらないが風貌からはそれを感じ取る事ができないのだ。私は興味本位に割り箸で立会いを申し入れた。
彼らはどんな空手の達人であろうとボクシングのチャンピオンであろうと棒を持たせたら絶対に負けないらしい。格闘技の中でも剣道の達人には誰も敵わないそうだ。
そんな事もあったのでどれほどのものか自分で体験して見たかったのだ。実際にやって見ると打ち込んだと思っているが先に突かれているというのだ。
実際に突かれると痛いので突かないという約束で立ち会ってもらったが、あまりのスピードに感覚がわからなかった。レベル差が違いすぎて彼の凄さが解らないで終わるお粗末さであった。
ただ、立ち会ったときの彼の目つきが普段とはまるで違う迫力があった。割り箸であろうと立会いの構えをとると武人に変身する凄みは体験した者でないと解らないだろう。