長男

メールに着信があった。

「最近本を読むようになったけど、何かオススメの新書とか教えてよ!」

送り主は長男だった。
殆んどコミニケーションのない関係にあるので驚いた。
それと同時に、何か壁にぶち当たっているのだろうと想像した。

長男は高校を中退してロックミュージシャンを夢見ている。
現実はアルバイトをやりながら挑戦しているので、かなり苦労しているに違いないと思う。
しかし、夢があってそれに向かって努力を重ねる姿勢を彼から感じ取った。
高校を中退した時の彼の在り方と決定的に違うと思ったのは彼と食事をしている時だった。

1年近く喋ってもいなかったので、メールの返信をする時にオススメの本を紹介するのと合わせて食事に誘ったのだ。
麻布十番の焼き鳥屋さんのカウンターで酒を飲みながら会話をした。
会話と言っても、言葉少ない中で彼が自分の成長の為に何か良い本がないかと、むさぼりつく様な貪欲さを感じたし、本来の素直さも健全だった。
そこには学生時代の宿題の為の勉強、親から言われた勉強ではなくて勉強の為の勉強をする姿勢だった。

夢を追いながら、コツコツ努力を重ねて今を100%を生きる。
これを実践していれば大丈夫だから自信をもって前進しろと彼に言った。
やりたい事が有ってやれているのだから、結果が出ていなくても今はそれが続けられるのだから感謝して精一杯やったらいいと思う。
過去を振り返って後悔するより、夢を追って自由にやれるのは私も同じである。
これほど幸せな事はないように思う。

麻布十番からタクシーに乗って広尾にある弟の寿司バーへ移動中に、ドライバーが新人さんだったので根掘り葉掘り質問してみた。
24歳で3ヶ月になる赤ちゃんと奥さんの3人で足立区に住んでいると言う。
ドライバーになって3ヶ月目で前職は福祉の会社をリストラされて、生活の為に選択したのがタクシードライバーで給料は20万円貰えれば良い方だと。
労働条件も考えると持続可能性を彼からは感じられなかった。

長男がどう感じたかは聞かなかったが、現実の世の中の厳しさと自分の置かれている状況からすると、可能性から発想して諦めずにどこまで夢に近づける事ができるのか。
静かに見守っていたい。