下町文化

そこには昭和の風情がたっぷりと残っていた。
お煎餅屋さん、豆腐屋さん、餃子屋さん、お惣菜屋さん、天ぷら屋さん、麺屋さん、例をあげたらまだまだたくさんの個店があった。
それぞれが専門店でそれ以外は扱っていない。
麺屋さんは麺の専門店でラーメン店ではなく、焼きそば、ラーメン、など麺の種類が幾つもあって、それを生業としている。

八百屋さんはザルに入ったお金からおつりを出していた。
たくさんの人で賑わっていて、懐かしい光景に目を細めていた。
まさに下町文化ならではの魅力である。

初めて降りた駅だった。
東武線の西新井駅、埼玉の春日部方面から中目黒まで直通になっている。

駅から歩いて5分くらいすると、関原商店街に行きつく。
私は商店街のシャッターが閉まった店を活性化するプロジェクトの下見を兼ねて来た。
歩いている途中で右方向を見ると新しいショッピングモールや、新しいマンションがたくさん立ち並んでいた。
区画整理による街並みは整然としている一方で、能面ビー玉のような何か熱い感情を失って、そこから新たなエネルギーが湧き上がってくる気配はまったく感じられない。

反対側に残っている下町文化とは対極な暮らしが映っていた。

歩いている直ぐ右手に大きな壁があって、それはまるでベルリンの壁のようで、左手が東ドイツ右手に西ドイツといった感じだろう。

それは近代が良いと解釈して発展してきた欧米が現在直面している問題が全てを物語っているようで、もっと魅力のある街並みや暮らしはそこには無いのかもしれない。

むしろ、関原商店街には宝がたくさんあって、日本の文化がぎっしりと詰まった暮らしぶりには何とも言えない魅力がある。
宝の山に見えるのは私だけだろうか。

馴染みという言葉がぴったりだ。

子供は近所の人達で自然と守り合い、店主と客の何気無く交わす会話には、人としての温かみある風情を感じる。
それは、決してショッピングモールやスーパーでは体験することは無いだろう。

私はここに未来のヒントがあるように感じる。

全国にはこんな宝の山が地方の里山から、旧市街地に至るまでたくさんあるだろう。

新しい都市開発でショッピングモールがたくさん出来た弊害によって、昔栄えた商店街がシャッター街へと変貌してしまっているのは、見方を変えるとその街独自の文化を紐解いて、新たなエネルギーを注ぎ込む事で、充分に活性化して行けるように思う。

その日は、おにぎり屋さんで、ひじきと高菜のおにぎりを買い、斜向かいの天ぷら屋でちくわの天ぷらを買ってランチにした。
お惣菜屋さんのコロッケが30円だったので食べたかったが、一個だけ買うのも気が引けたのでやめにした。

手作りのおにぎりは最高に美味しかった。