ベネチアの小さなカフェ

パリでの仕事を終えてベネチアに入った。

今回の目的は都市計画と街並みを観察するため、通訳には次男を連れてやってきた。

陸路の移動はボートや船、あるいはかなり遠回りになるが徒歩が基本で、車の出入りは不可能、自転車も禁止になっている。

滞在中はほとんど歩いて移動したが、極めて複雑な経路になっていて、地図がなければあっという間に迷子になってしまう。
実際に勘を頼りに歩いて見たが、5分と経たずに迷い込み、同じような景色に何度も行き止まりで引き返し、川を挟んで道行く人々を見ながら呆然と立ち尽く場面も度々。
まさか、これが都市計画なのかと思ってしまうほどの袋小路の多さで、おまけに川の幅も狭いところで1メートルほどしかない。
そこを水夫の連中は熟練の技で颯爽と駆け抜けていく姿はさすが、絵になっていた。

暑さと歩き疲れて途方に暮れていた時、ある小さなカフェに入った。
ピザとオレンジジュースで5ユーロ、コスパ良くピザのスペックの高さに驚いた。
パリと比較すると断然イタリアに軍配があがる。
パリは決して食の分野で感動する場面がなく、クロワッサンくらいで、あとは基本的に高い割には大したことはなく、極めてコスパが悪く感じる。
現実にイタリアからパリに5ユーロで食べられる店がちらほら見受けられるようになって、行列が出来ているのを見かけた。
そう言う意味でも食で勝負するには、パリは充分勝機はあるだろう。

北に移動するため、レンタカーを調達して帰ると財布がないことに気づき、はっと車の中に置き忘れたと思いきや、ショップも閉店時間を過ぎ、鍵はキーボックスに入れてしまい、途方に暮れていた。
今夜の飯は駄目かと諦めかけたとき、あの小さなカフェを思い出した。
早速行ってみると、中国系イタリア人は英語もままならない中、こちらの必死の形相で英語か日本語かよくわからないジェスチャーで説明するのを見て、ようやくわかったようで今はお金が無いが食べさせて欲しい、明日必ず返すから信頼して欲しいと、こちらが訴えかけるのを理解してくれた。
もはや、次男もこれで通じるのかと呆れ顔、しかし、ベネチアの小さなカフェの温かい心に感謝の念を込め、美味しい食事とワインを楽しんだ。