元旦のお滝行

それは、凍ったしめ縄で身体を叩かれ続けているような感覚ですわ。
あるご婦人がさらりと言った。

かつて、冷水シャワーを毎朝浴びて10年ほど過ごし、おかげでめったに風邪をひいた事がなかった。
しかし、元旦の朝7時からのお滝はそのレベルを遥かに超えるものだった。

ぶっちゃけ、前日まではご婦人の言葉が強烈な印象となって緊張していたのだ。
何故にこんな憂鬱な想いをしてまで、冬のお滝に入ろうとしているのか、刻一刻と迫るその瞬間まで問答をしているかのようだった。

本質は修行好きなのかも知れない。
自己を高める為の修練が好きなのだろう。

大晦日に現地入りした際には意外にもそんな想いは無かった。
完全に吹っ切れていて、腹が固まったようで通常の精神状態だった。

北九州の山の中にあるお滝に着いた。
介添えの人が順番に導いてくれる。
般若心経を唱えながらお滝に打たれる。
待っている間も足が冷たい水に浸したままだ。
うぅ、ぐっとくる、そして本番を迎えた。

何と声が出ない、あまりの衝撃に声が出ないではないか、、
深く入りすぎていると、介添えの人が少し前に導いてくれた。
ようやく声が出るも、早く時間が過ぎてくれないかとひたすら我慢の失態ぶり。
終わったあとは、まっすぐ歩けずにヨロヨロ状態。
しかし、直ぐにすっきりして身体がホクホク暖かくなってきた。

何とも言えない爽快感。
全てのマイナスエネルギーが洗い流され、新たなエネルギーが注入されたかのような感覚に苦しさが嘘のようであった。

ご婦人にお滝の感想を申し上げたところ、「あら、何てもったいない、早く時間が過ぎてくれと思うことは、今にいない証拠ですわ。
せっかく来たのに今この瞬間を体感しなくちゃ。
わたくしはしっかりと今にいましてよ」

ご婦人はさらりと言った。

ごもっともである。
あまりにも冷たく苦しい境地に心がそこにいなかったのだ。

今この瞬間を味わうことなく終わったお滝行、次回はこれをテーマにしっかり望みたい。

東京までご婦人とご一緒したが、やはり只者ではなかった。
何と、あのマイケルジャクソンが自宅に遊びに来て、家族でディズニーランドを貸し切った事があるそうで、世界のトップに通じたご婦人だった。

来月のお滝は冷たさがピークを迎えプロでも声が出ないようである。
しかし、介添人の方はひたすら水を浴びたまま、常人ではない凄みに驚愕していたが、さすがに終わった時は足の感覚がまったくないらしく靴を履くことが出来ない姿が印象的だった。