人間力

雪景色の早朝は静まり返っていた。
車の行き来がなく、人の気配もないこんな街の風景をかつて見たことがなかった。

六本木ICOMコインパーキングに着くと一台だけ駐車してあったが、あとはスッポリ雪で覆われていた。
このままだと駐車場として機能しないと思い、自宅に戻り除雪の準備をした。

再び現地に来てから除雪作業に入った。
1時間くらいで終わるかと思っていた。

すると、6時半過ぎくらいからお客様が入庫してきた。
急ぎ、駐車場スペースを確保しようと作業を進めるが、捗らない状況にお客様が車を降りて除雪を手伝ってくれた。

建築現場が近くにあるのだろう。
職人風の男性は道具の揃いがよく、車内からスコップを取り出し、駐車する場所の除雪を始めた。

驚いたと同時に感謝の念と恐縮する気持ちが交錯していた。

すると、また一台入庫してきたが、作業が追いつかない。
黙々とやれど一向に進まない状況に呆然と立ち尽くし、あっと言う間に1時間を超え、このペースだと6時間ほどの覚悟していた。

とにかく、お客様に迷惑をかけられないので、作業の優先順位を考えた。
入り口付近を完璧にやってから、各車位置のタイヤの動線を除雪して入れるようにした。

それでも、スリップして立往生する車があったので、タイヤ付近の雪をかき分けていた時、先ほどの職人さんが近づいてきた。
タイヤのスリップ止めを持ってきて、後ろから押してくれたのだった。

何て素晴らしい人なんだろと、人間力が高いというか、温かい心の持ち主にただ感謝の言葉しか見つからなかった。

朝早くから現場の作業準備もあるだろう。
むしろ、現場の除雪を優先する事を考えたら、時間を惜しまないはずはない。
しかし、目の前の困った人を見過ごすことなく、他人を優先する気持ちの人間性に大切な気づきを与えてくれた。

逆の立場だったらどうだろうか考えてみた。
他社駐車場でお客の立場だったら、駐車するのに除雪をするだろうか。
いや、しないだろう。
そのまま車を入れて、スリップして立往生している車を横目に見ながら、時間を気にして急ぎ目的地へ向かうだろう。

こう考えてみると、人間力の差に何とも言えない寂しさを感じると同時に、人として尊敬される人物とは、社会的地位にまったく関連性はなく、政治家や医者、弁護士、実業家などの人が決めた「名」は人と完全に分離しているものだ。

人類があの職人さんのような人の集団だったら、争いもない素晴らしい地球人として、宇宙から承認されるだろう。