蕎麦湯

住宅地の中にひっそりとあった。

「玉笑」ここで一度、蕎麦を食べてきた方がいいよ、鮨早川の弟が言っていた。
食通の常連さんから聞き評判がすこぶる良いらしい。

表参道から歩いて12分ほどにある店の前には、すでに多くの人が並んでいた。
時刻は午後6時になろうとしていた。
ラストオーダーが7時30分、閉店が8時なのでこのまま並んでいても食べれる保証はなかった。

7時が過ぎた時点でまだ3番目だったので、難しいと思ったが、神様に間に合うようお願いした。
しかし、時計は7時30を回ってしまった。
ラストオーダーが終了し、これまで待ったのが徒労に終わると思われた時だった。

待合室の引き戸を開ける音がして、店員さんがメニューを持ってきてくれた。
そこで予め注文をすると、ほどなくして店内へと案内された。

周りを見渡すと和の雰囲気がとてもしっくりきたが、テーブル席とカウンター席を合わせて16名の狭い空間だった。

残り20分で食べなくてはならなかったが、蕎麦焼酎の蕎麦湯割りが最初に出てきた。
つまみには、板わさ、味噌焼き、蕎麦がき、豆腐を注文した。

蕎麦湯割りを口にした瞬間、これまで味わったことのない、蕎麦の香りと旨味が心身に染みるような感覚に、幸せ感が充満していた。

本丸の蕎麦はもちろんのこと、蕎麦湯の質に圧倒的な違いがある。
何でこんなに蕎麦の香りと旨味が凝縮されているのかと思うほど、蕎麦湯のクオリティーは高かった。
蕎麦湯だけでも味わいに来る価値はあるだろう。

20分で蕎麦湯割りを3本、つまみと蕎麦のおかわりをせわしなくいただいたが、そんな短い時間でもこんな美味しい蕎麦湯をいただけて、本当に本当に良かったと思える素晴らしいお店だった。

神様に感謝する。