社長ブログ2015.01.18
鮨職人
恵比寿の雑居ビル5階にある「鮨早川」の店主である弟から珍しく食事の誘いがあった。
銀座にある「鮨青空」に一緒に行って欲しいとの事だった。
彼も私もまだ行ったことはなかったが、ここの店主があの数寄屋橋次郎で修行した人物だという。
銀座8丁目の雑居ビル3階にある鮨青空は「はるたか」と読むそうだ。
店主の名前がそうらしい。
弟が40歳になるが一つ上になるようだ。
10年前にこの場所で創業して、ミシュラン二つ星を獲得して名乗りを上げた実力派だ。
次郎で修行した際は、辞めるまでに鮨を握る事がなく、裏方での日々が続いていたが、店が終わってから密かに握りの練習をしていたそうだ。
そんな銀座の名店で何かを感じ取り、自らの学びとしたかった弟が約二か月前に予約をしたのだ。
カウンター10席と小上がりのある程度なので、予約はなかなか取れないようだ。
店に入りカウンター席に座ると、板場にいた店主がすっと厨房へ移動した。
弟曰く、同業が来たから抜かるなと調理場へ気合いを入れに行ったと言っていた。
彼ら鮨職人は雰囲気で直ぐに察知するらしい。
弟も見るからに職人丸出しで、私は鮨を握っていますと言わんばかりの顔なのだ。
調理場から戻った店主は今日はどうしますか、と我々に尋ねた。
弟はお任せしますと言った。
彼らのような鮨屋では、握りかコースの選択をするようだ。
握りの場合、つまみ料理は一切なくて好みのネタを注文するか、店からお任せのネタが出される仕組みになっている。
握りだけの場合、一人2万5千円位、コースだと3万5千円位のお代になる。
席を見渡すとカウンターの奥に陣取っている年配のカップルは常連さんのようだった。
食べ慣れている雰囲気が漂っていた。
驚いたのは1人客が目立っていたのだ。
私の隣とその隣も男性1人で、熱燗をちびちびやりながらも、コハダとガリの巻物を注文したり、からすみを一枚とか、いかにも通な感じの職人とのやり取りをしていた。
私はどんな奴だろうかと横を振り向き顔を拝んでみると、まさにオタク系父ちゃん坊やなのだ。
この手の店にはよく出没すると弟は言っていた。
弟の店は当初、この手の輩を受け入れたくない為に、1人客お断りの方針だったらしい。
何か面倒くさくて、薄笑いしながら食べている姿を見ると、気持ち悪く背筋が寒くなるからだと言っていた。
しかし、食べログの書き込みとかも彼らが主役のようなので、無下に出来ない実情があるようだ。
食後に弟から今日のディブリーフをしたいからお茶を飲もうと誘われた。
弟の感想は、海苔が決定的に違う5段階で最上ランクのものを使っていて、尚且つ炙っているので、パリッとした食感はひと手間かける次郎流だと絶賛していた。
私の感想は一言で表すとコスパが悪い。
しかし、ネタが最上級の中でも特にとんがっていたのがウニと赤貝だった。
この2品はこれまでに味わったことのない絶品中の絶品だった。
ウニは濃厚なこくの効いた甘みと、塩の加減が絶妙にマッチしたものがじわーっと口の中で広がっていく感じは素晴らしかった。
赤貝はその場で殻から取り出す手間のかけようで、見たことのないプリプリした肉厚は赤貝本来の味が凝縮していた。
世の中にこんなウニや赤貝があるんだなと思い知った体験をした。
地方で取れる最上級ランクの魚介類は、東京でこの手の店が破格の値段で買う構造になっているので、東京の格式高い名店でしかお目にかかれない。
地元は我慢をしてランク3〜4程度が美味いとされる所以だと理解できた。
弟が今回学んだ事で、どんな手間をかけた仕事を見せてくれるか、これからが楽しみである。
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