社長ブログ2015.03.22
マイホーム
17年前のお客様より会社へ連絡があった。
受付したスタッフより先方から連絡する旨承っていたが、連絡先を聞いていたので私から連絡してみた。
Nさまとは、当時売り建て方式で土地を購入してもらった後に、建物を新築するという建て売りの逆バージョンだった。
当時で土地と建物を合わせて7000万円を超えていた。
開発現場としての面積はかなり大規模区画になっていて、プロジェクトとして売主2社、建築請負業者、建築設計会社、販売会社が数社関わっていた。
当時は売買仲介を主力業務としていて、Nさまの他に2名のお客様の販売を仲介した。
Nさまに電話をすると最近は目の調子が悪く外出も大変なので、自宅に来て欲しいと言われてNさまのお宅に伺った。
ご夫婦とも17年ぶりにお会いした。
お二人とも70歳を過ぎていたが、声のトーンや雰囲気は当時のままの印象だった。
ご主人が当時の不動産取引に関わるファイルを持ってきて、気にかかっていた事を幾つか質問された。
ご自身亡き後の事を心配され、権利証や領収書、謄本など必要な書類と印紙関係を確認して次の世代の為に遺品整理をしているのだ。
私の役目は書類が正しく整っているか、この一点だけである。
Nさまは几帳面な方なので、書類関係は当時のまましっかりと保管してあった。
契約書関係の書類は当時私が書いたもので、あまりにも簡素な書式だったので、とても7000万円の買い物をしたとは思えない痕跡が残っていた。
やはり、私はこのような仲介業務は向いていなかったのだろう。
まさにこの翌年には仲介業を捨てる決断をして、大家業の道へと進む第一歩を踏み出した年になるからだ。
この決断がなかったら今のイコムは存在していないだろう。
現に当時のプロジェクトに関わった会社は全て消滅し、今は世の中に存在していないのだ。
Nさんには申し訳なかったが、捨てた時から全く連絡しないで今日まで来てしまった。おまけに売主も建築会社も潰れてなくなり保証も何もあったものではない。
時代は変わって土地も下がり続け、Nさまの土地価格も当時から比較すると半値近くになってしまった。
しかし、Nさんご夫婦は大変条件の良い土地を紹介いただいて満足していると17年経った今でも言ってくれる。
マイホームを一生懸命働いて購入し、自分の城としてのステータスを確立したNさま。
退職金で住宅ローンを全て返済した。
17年ぶりに遺品整理のために呼ばれた私はNさまを見ているとマイホームとは何と無情なものなのかと感じてしまう。
マイホームに生涯働いた賃金の大半を費やし、遺品整理にまで気を配るマイホーム。
残された家族にとってマイホームはどんな意味を持つのだろうか。
子供にとってはもっと駅の近くで便利なマンションの方が住みやすくなるかも知れない。
あるいは、グローバルな時代になったので海外に転勤になることだってありえる。
今、社会問題になっている空き家だって、かつてはNさまのような履歴があったかも知れない。
そう考えるとマイホームを購入する選択は見つかりそうにない。
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