忘れ物

食事会のあと個人タクシーに乗車して自宅へ向かった。

酔っ払っていて、乗車した直後から記憶がなくなっていた。

帰宅するとスマホがない事に気付いた。

ハッと思い、帰りのタクシーの中に忘れたかと考えて電話をしたが、午前9時からの受け付けとの伝言が聞こえてきた。

朝の目覚めと共にスマホの事が気になっていた。
もしかしたら、店に置き忘れたのかも知れないと考えていた。

朝一番で個人タクシー協会に電話した。
受付の女性は忘れ物は最寄りの警察署に届ける事になっているので、近くの警察署に行って確認してくださいと言われた。
警察署のネットワークでパソコンからどこの署に忘れ物を保管しているか見れるようになっているようだ。

A署の落し物受付に行った。
すると、ちょっと暗めの女性が調べてくれた。
しばらく待ったあと、どこの署にも保管されてないと言われて愕然とした。

すると、あとは店しかないと思い、少し早かったが電話してみると繋がった。
あってくれと祈るような気持ちで聞いてみると、昨夜はスマホの忘れ物はないと言う。
いや、そんなはずは無いと思うので、もう一度調べて欲しいと訴えた。

ない。
何故だろうと思いを巡らせていた。

店かタクシーしか考えられないし、誰かに持っていかれたか、あるいはドライバーが持ち帰りまだ警察に届けていないかも知れないと思った。
しかし、協会に確認すると忘れ物はその日のうちに届けるよう指導していると言う。

もう探すのを諦めて、なるべく早く新たなスマホを調達する手段を考えると同時に、他の署に行ってもう一度、駄目もとで調べてもらおうと考えていた。

O署に行って受付を訪ねると明るい男性が調べてくれた。
まったく期待せずに待っていたが、何とS署にどうやら似たようなスマホがあるという。
早速、S署へ向かい確認するとあったのだ。
間違いなくスワロブスキーのカバースマホが目の前に現れた。

嬉しさと同時にA署の暗い女性署員に怒りを覚えた。

役所の場合、おしなべて個人的な力量が問われる場合が少なくない。
何のために仕事をしているのか、誰として社会に存在しているのか、このあたりの個人差が大きいようだ。

しかし、スマホが見つかった事で、その思いを上回る喜びが充満していた。