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社長ブログ2016.03.13

こぼれ話し

突然の出来事だった。

信号待ちをしていると、隣車線に止まっている軽トラから窓を開けてこっちへ話しかけてくるおっちゃんがいた。
どこの誰だか知らなかったが私も窓をあけてみた。

すると、突然彼は言った。

「俺もあんたと同じ車を乗ってるんだよ!
六本木ヒルズに住んでいて、ビルもたくさん所有してるんだ。
若い女も3人いて忙しくて大変だよー、朝だってムスコがビンビンに元気でよー、何歳に見える?」

私は大笑いしながら、面白いおっちゃんだなと思って聞いていた。

すると、「俺これから大学時代の同窓会でこんな格好してるけど、毛ガニやアワビを届ける役目なんだわぁ、そんでもってうちの女房が慈恵医大に入院してるんで見舞いに寄るんだよ。」

ところで、毛ガニとアワビが余るから持ってくか?

この瞬間で全てがパーになった。

なんだよ、おっちゃん散々自慢してたけど、要するに毛ガニやらを私に売りたいだけじゃねえかよ。
親近感を覚えたけど、そのやり方はないよと思った。

それと同時にこんな営業のやり方で商売が存在している事に驚いた。

私は彼を受け入れる度量がなかった。

すると、おっちゃんは信号の先で車を横づけするからついてきなよと言った。
私は回想していた。

彼のロジックはこうだ。

最初に同じ車だと言って感心を持った。
次にヒルズに住んで資産家だと思わせたり、女遊びを楽しむ人として興味を持った。
そして、同窓会や妻の入院で感情を持った。

しかし、直後に毛ガニを持っていくかと言われて全てがおじゃんになった。

おっちゃんが車を横づけして降りてくるのを横切りながら手をふった。
そして、こう言って別れを告げた。
「今日は時間がなくてもらえなかったけど、誰か他にいい人いたらあげてよ、じゃあ頑張ってね〜」

意外にもおっちゃんは落胆した様子もなく、爽やかな笑顔にすら映って見えた。
内心ではダメだったかと思ったにせよ、いちいち落ち込んでいたら、こんな商売は続かないだろう。

おそらく、彼に持っていくかと言われてただで貰えると思う人達がいるのだろう。
資産家で女が3人もいる余裕のある御仁が、余ってると言われたら、そうですか、それではいただきましょうと、釣られてしまう人だっているかも知れない。
いや、彼がこの商売を継続している事がそれを証明している。

そういう意味では、おっちゃんがすごく逞ましく思えてくる。
都会を軽トラで走り回り、信号待ちしている短時間で勝負している。
それはまるで、大海原でマグロを一本釣りしている漁師のごとく難易度が高い仕事である。

今度信号待ちしていて遭遇したら、おっちゃんを受け入れようと思えている。
信号の先で車を横づけしたら、降りて冗談半分で言ってやろうと思う。
毛ガニをもらえるなんて今日もついてるなと。
すると、おっちゃんはこう切り返すことだろう。

「いや、普通には手に入らない品だからね、格安にしとくからもってきな」
こんな感じで商売をしているのだろう。

私はそのやり取りを楽しみながらも値踏みをして、おっちゃんと会話のダンスを楽しもうと思う。

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